iPad を使った学習効果の検証 iPad 教育メソッドを用いて 


iPad を使った学習効果の検証
iPad 教育メソッドを用いて
SPP 銀色のかささぎ
東京児童相談センター 一時保護所

私たちのプロジェクトチームは、学習支援のツールとしてiPad での学習を一時保護所の子どもたちに行っているが、実際学力向上の手段としてどのくらいの効果があるかを検証すべく、45分間の授業を下記のように組み立て、iPad 教育メソッドとした。


1.保護所でいつもやっている問題(受験研究社小学計算)をやり、その子の進度をみる (15 分)
2.単元テスト (こちらで用意したテスト) で時間を測定 ( 5 分)
3.iPad で算数ドリルをして、集中的に訓練。( 20 分)
4.成果をみるため、もう一度単元テスト で時間を測定 ( 5 分)


①1年生 ゆうたくん1回目 7/24
多動症と見受けられる子どもで、何かとメディアコーディネーターに話しかけたり、席を立ったりと落ち着いて学習に取り組めないが、計算する力はあった。はじめのテストは、繰り上がりのないたし算(1)20 問を52 秒で解き、正答率100%であった。iPad 教材には興味を示し、紙の勉強に比べて明らかに集中して問題に取り組んだ。途中で出てくる、正答率や学習時間も気にするようであった。
iPad 教材の後のテストは、集中力がもたないかと危惧したが、繰り上がりのないたし算 (4)を 20 問を61 秒で解き、正答率100% であった。普段落ち着きがない子でも、テストで点を取るということと、タイムを測るということに意識が働いたためと思われる。前より時間が長かったのは問題の難易度が高かったためで、彼のような多動の子も集中力が途切れるとことなく学習ができたこと自体、iPad の成果であろう。

②1年生 れいじくん1回目 7/24
保護所でやっているプリントは、一桁の繰り上がりのない足し算であり、指で数えながらまたは紙に丸をかいて数えながら解いていくレベルである。また、少し集中力に欠けるためにプリント教材50問を15 分かけて解くゆっくりペースだった。iPad 教材に取り掛かる前のテストでは繰り上がりのない足し算20問中正答率100%であるが、5分かかった。
iPad 教材を始めると、はじめは戸惑っていたようだが、明らかに紙よりも集中して取り掛かれるようになり、10問解くと出てくるタイムを気にするようになった。記録によれば、iPad 教材10 問終わったところのタイムは3分52 秒であったが、次の10問は3分50 秒、最後の10問は2分を切った。それは、紙の時だとずっと机に向かっていることができず落ち着きがなかったが、iPad だと、音楽などが流れ、計算に夢中になり、10問毎に出てくる正答率とタイムを気にするようになったからである。iPad の勉強のあと行ったテストは、繰り上がりのない足し算20問で、正答率100% 時間は4分10 秒で明らかに集中して問題を解けるようになった。

③1年生 みつるくん1回目 7/24
1年生ながら、計算問題が大変得意で、保護所でやっているプリントをやってもらったところ、繰り上がりのあるたしざんを1回目50問中50問正解で1分30秒、2回目50問中50問正解で1分20秒、3回目50問中50問正解で1分20秒であった。
テストは繰り上がりのある足し算(10)を32秒で解き20問中19問正解正答率95%であった。iPad 教材での練習は1年生のはじめから進めた。こちらの教材でも同じように計算時間も理解も早かった。iPad 教材後のテストは、繰り上がりのあるたし算(2)全20 問中20 問 正解で 正答率100% 学習時間は28 秒であった。もともと学習がすきで計算も早いため、現在学習しているところより一歩先をやってもよかったかもしれない。

④5年生 真央くん2回目 7/24
家でデジタル機器には慣れているようで、iPad の操作やアプリについて熟知している。5年生であるが、iPad の教材の5年の分数問題をすべて前回解けたので、6年生の分野の約分に挑戦することになった。iPad 教材に入る前のテストは、約分2 19 問正答率100%1分31 秒かかっている。新しい分野ではあるが、簡単にやり方を教えただけで、できてしまった。iPad 教材では、約分通分を中心に勉強した。そのあとのテストは約分3 12 問正答率91% 1分28秒であった。前のテストより難易度が高かったためと思われるが、そのあとで、おまけのソフトをやりたいと思って焦っていたように見える。学習がおわったあとのお楽しみの設け方も、いい場合と悪い場合があることがわかった。

⑤2年生 ゆきみさん2回目 7/25
現在、保護所でやっているところは 3桁の足し算 20問を1分で解いた(足し算の3年生の分野である)。話を聞いてみると、足し算は得意であるが2年の1学期より学校へいっていないため、かけ算を習っていない。保護所にはドリルはあるが、教科書がないので自分が学校で教わった範囲で学習をしているということがわかった。そこで、まずかけ算のテストを行いどのくらいできるか測ってみた。すると、かけ算九九(1) を約5分で解き、正答率は50%であった。半分正解できたのは、5の段や1の段などすでに知っているところもあったからである。その様子を受けてメディアコーディネーターがiPad の九九の教材を使い、かけ算の仕組みを教えることになった。iPad 教材のかけ算部分は、正解を導く提示型の説明がありメディアコーディネーターがうまく教えることができた。30 分のiPad を使ったドリルのあと、同じ問題かけ算九九(1)をテストした結果、約4分半で解き、正答率は90%に上がった。また、間違えた問題は、一度目にやったテストで出来ていた問題(2×3=5、1×1=2)であった。

⑥5 年生 明子さん1 回目 7/25
5 年生の勉強が遅れており困っているとの本人からの申し出があり、特に小数の計算を集中してやることになった。まずは、どの程度できるかためすために、4 年のひき算小数 くりさがりなし(1)をテストした。結果は、20 問を3 分36 秒で解き、正答率100%であった。
ひき算に関しては問題がないようなので、iPad 教材をつかって、その先の部分を学習することにした。5 年の分野の小数の問題に取り組み、小数のかけ算では、メディアコーディネーターに板書で教わりながら、仕組みを覚え解くことができた。小数のわり算までiPad 教材に取り組んだ。初めて習うところであったが、問題が順序だててあったのと、わからないときはメディアコーディネーターが教えながら進むことができた。
最後に行ったテストは、5 年わり算 小数÷整数(1)本日初めて学んだ分野であったが、結果は5 分で12 問中5 問正解であった。教える時間に限界があったのでこの結果だと思うが、あとは保護所で繰り返し勉強していけばかなり効果があらわれると思われる。

⑦4 年生 あんさん2 回目 7/25
まずは、本人の希望で3年 ひき算3 けたの数(4)をテスト。15問中15問正解で正答率100% かかった時間は3分57秒。次にかけ算2けたの数と1 けたの数(2)をテスト20 問中20 問正解でかかった時間は3分37秒であった。3年の分野は十分理解していると判断して、iPad 教材では4年の問題を解いていった。わり算のひっ算がはじめてであったので、メディアコーディネーターが教えながら進んだ。最後のテストは、4年わり算2位数÷1位数 商が一けた(6)を15問中15問正解で、4分57秒かかった。このケースは保護所のドリルをみても、テストをしてみてもよくできるので、どこを支援していいか迷ってしまいはじめのテストに時間をかけすぎてしまった。しかしながら、本人はいろいろできて楽しそうではあった。

⑧3年生 ひろとくん2回目 8/7
保護所でのドリルをみて、かけ算3けたの数と1 けたの数のところがちょうどいいところと考えて、保護所でのドリルではなく、すぐにテストをした。かけ算3けたの数と1 けたの数(1)15問を5分かけて解き4問間違えて正答率73%であった。間違えた4問についてはメディアコーディネーターが採点しながら正解に導いた。つぎにかけ算3けたの数と1けたの数(2)をやり、15問を3分で解き、15問中12問正答で正答率80%であった。やはり間違えた問題はメディアコーディネーターが採点しながら正解に導いた。最後にかけ算3けたの数と1 けたの数(3)15問をやり、正答率100%で2分かかった。ご褒美として、iPad のゲーム(電車が動く!)を5分間やり、iPad 教材のかけ算をはじめた。iPad教材は、10 問毎解いた時間がわかるようになっているのだが、1回目2分56秒 2回目2分22秒 3回目1分19秒 4回目 43秒 すべて100点だった。かなり早くなったのは、iPad 教材の学習時間の提示のしかたに刺激されたものである。

iPad 教材のあとで、テストを行った。かけ算3けたの数と1 けたの数(4)15問を2分46 秒かけて解き、正答率100%であった。時間は伸びたが、(1)~(3)までのものより難易度が高いのに正答率が100%になったことは、評価できるだろう。

⑨5年生 直久くん1回目 8/7
算数に苦手意識があるようで、国語のドリルを10分くらい取り組んだ。そのあと保護所でのドリルをみて小学校3年生のたし算3けたの数のところをテストした。たし算3 けたの数(2)15問を1分43秒で解き正答率100%であった。iPad 教材の前にご褒美として、水塗り絵をしてから、iPad 教材のたし算4年生からはじめた。やはり学力的についていけず、1年生に戻ってたし算を始めた。本人もたし算の基礎からやりなおしたい意向があった。算数が苦手であるが、できるようになりたいと思っているのはわかった。
一通りiPad 教材を終えてから、最後にテストを行った。たし算3けたの数(3)を1分23秒で解き、正答率100%であった。

⑩小学校5 年生 胡秋くん2 回目 8/7
算数は得意科目で、保護所のプリントは小数÷小数30 問を10 分ほどで解いた。テストは、わり算 小数÷整数(2)12 問を1 分57 秒で解き、正答率100%であった。iPad 教材の前にご褒美で、電車が動く!をしてから、iPad 教材に移った。小数の分野はすぐ終わってしまったので、速さの問題にも取り組んだ。かなり難しい問題がつづいたが、最後まで解くとができた。最後に行ったテストは小数÷整数(3)を1 分18 秒で解き、正答率は91%であった。彼の場合は、もともとの計算能力が高いので、iPad 教材も難しいところに取り組みそれなりに達成感を味わえたと思う。


※ iPad 教材 熱中先生算数教室1年~6年
ペーパーテスト プリント教材向日葵 1年~6年
※ 名前は仮名です